さ〜て、次回、2019年2月14日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『ファースト・マン』です。来てしまいました。デイミアン・チャゼルとライアン・ゴズリングの『ラ・ラ・ランド』コンビ再び! こりゃ、IMAXで観たい! 僕、アームストロング船長の私生活やキャリアについて調べたことないんですけど、ここはあえてそのままの状態で、劇場というロケットに乗り込みます。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!
イタリア映画『愛と銃弾』公開記念レビュー
どうも、僕です。ポンデ雅夫こと、野村雅夫です。僕たち京都ドーナッツクラブが字幕制作を担当したイタリア映画『愛と銃弾』が、現在、全国で順次公開されています。大阪は2月1日からシネ・リーブル梅田、そして京都は2月9日から京都シネマでの上映がスタートします。僕たちもそれなりの数の字幕を翻訳してきましたが、実は全国で一般公開されるのは、この作品が初めて。しかも、監督の前作を買い付けてイベントで上映していたのも弊社でございまして、感慨もひとしおですし、何よりも作品に惚れ込んでいます。
そこで今回は… 東京での公開に先駆けて、僕がTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に電話出演して宇多丸さんにご指南した内容をまず改めて記載しつつ、メンバーのチョコチップゆうこによるレビューをお届けします。どうか、この作品が多くの方の耳目を集めますように!
舞台は、イタリアを代表する大都市、ナポリ。街を牛耳る裏社会のボスのヴィンチェンツォが、敵対するファミリーに襲われるんですが、何とか一命を取りとめます。ただ、彼はもうマフィア(ナポリのこうした反社会的組織はカモッラと呼びます)の大物であることに疲れているんですね。そこへ、映画マニアの妻がこう持ちかけます。『007は二度死ぬ』みたいにしようよ。つまり、表向きは死んじゃったことにしてしまって、葬儀も盛大にやって、その後でひっそりと海外へ逃亡しようと。それぐらいの資金もあるし。この計画を知るのは、ファミリーの腹心数名だけ。すべてを秘密裏に運ばないといけない。ところが、ひっそりとヴィンチェンツォを運び込んだ病院で、女性看護師に姿を見られてしまうんですね。あのオンナを消せ。そう指示された腹心のひとり、ヒットマンのチーロが彼女を見つけ出した時に、気づくんです。この女、俺の元カノじゃないか。そこで、なぜチーロが裏社会に足を踏み入れたのかなど、苦々しい記憶が、彼女との甘い思い出と共にフラッシュバック。チーロは彼女を殺すなんてできずに、バイクで彼女と現場を逃走。ヴィンチェンツォ一家、敵対するファミリー、そしてはぐれたチーロと彼女。それぞれの運命やいかに…
京都ドーナッツクラブの拠点である関西を離れて1年、イタリア好きに囲まれていた生活から飛び出してみると「イタリア映画を観たことがない」という話を聞く頻度が多くなった。そうか日本ではまだまだイタリア映画はマイナーなのかも知れないと思い知った。
ではイタリア映画のイメージはと聞くと、「ヨーロッパの映画って暗そう」「戦時中の話が多い気がする」「やっぱりマフィアかな」というコメントが返ってきた。陽気な国、太陽の国、などとよく言われているイタリアという国のイメージと違ってなんだか重々しい。
もちろんある国の映画を一括りに語ることはできないが、改めて「ジャンルなんて関係ないよね」と思わせてくれたのがこの『愛と銃弾』だ。
物語の舞台はナポリ。主人公のチーロは、魚介王ヴィンチェンツォ率いるマフィアの一員で殺し屋として暗躍している。その魚介王の秘密を目撃した女性を殺害する命を受けるが、その目撃者が今なお愛する元恋人だったと知り二人で逃亡を図るところから物語は動き出す。
そんなあらすじを聞くとマフィア映画かアクションもの、またはラブロマンスかと予想されるが、開始数分でその予想は揺らぐ。死体が歌いだすのだ。声高らかに。そこから始まる怒涛の歌にダンス。あれ、これミュージカルだったかなと混乱し始めた頭にはマフィアの抗争で乱れ飛ぶ銃弾の音が響く。いったいこの映画は何なんだ、次は何が飛び出すんだ、そんな期待と共に物語は進んでいく。
本作の至る所に散りばめられているのは、イタリア国内外の数多くの映画へのオマージュだ。映画好きの人がにやりとしてしまうシーンがたくさんある。元ネタのいくつかは登場人物がご丁寧に説明してくれるのだが、私がくすりと笑ってしまったのは自他共に認める映画好きである魚介王の妻マリアのワンシーンだ。DVD鑑賞中に涙しながら登場人物になりきって暗記している台詞を口にする彼女の姿を見て、イタリアの名作ニューシネマパラダイスの一場面、映画館で観客が台詞を次々に口にするシーンを思い出した。その映画が大好きなのよね、と映画への愛を感じて微笑ましい。彼女はマフィアのボスの妻らしく肝の据わった悪女だが、時折見せる映画愛が彼女をただの悪役に留まらせずコミカルさと愛らしさのあるキャラクターに仕上げている。特に逃亡のために彼女が考えた偽名には思わず吹き出してしまい、心のなかで「よ!大女優!」とツッコミを入れてしまった。
この作品にはそんな思わず笑ってしまうシーンや大笑いしてしまう台詞が多くあり、そうかこれはコメディでもあったのかと気づく。アクションもミュージカルもロマンスもコメディも、あらゆる要素が含まれていてとても一言では形容できない映画だ。登場人物が歌うのも、ポップなものからナポリ民謡風、ラップと多種多様だ。時折「これは演歌?歌謡曲?」と思うコテコテ具合にナポリらしさも感じる。もちろん台詞は翻訳者泣かせのナポリ弁だ(原題の“Ammore e Malavita”の”Ammore”もナポリ弁の”愛”)。
そんなふうに「エンタメ要素全部盛り!味付けはこってりで!」と掛け声をあげたくなる具合で、観終わった時には「あーお腹いっぱい、面白かった」と思わせてくれた。
イタリア映画を観たことがある人もない人も、好きなジャンルに関わらずぜひ一度リラックスして観てほしい作品だ。国もジャンルも関係なく、楽しいものは楽しいと素直に感じさせてくれるだろう。
映画『十二人の死にたい子どもたち』短評
それは考えてみれば当然のことで、そもそも「十二人の〇〇」っていうのは元ネタがあるわけです。まずは、1957年にシドニー・ルメットが監督してベルリン映画祭近熊賞を獲得、そしてアカデミーにもノミネートされた陪審員たちの傑作会話劇『十二人の怒れる男』。そして、日本では筒井康隆がパロディーとして書いた戯曲『12人の浮かれる男』、そして三谷幸喜初期のヒット戯曲で映画化もされた『12人のやさしい日本人』があります。さらに言えば、この12という数字はキリストの弟子である使徒の数。ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』でも描かれている通り。そして、そこには裏切り者とされるユダがいる。それに倣うように、『十二人の怒れる男』では、父殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員全員が少年の有罪を認めるだろうという予測の中、ひとりが無罪を主張。さあ、どうなるっていう展開。
この手の邦画では珍しく、既存の洋楽ポップスを主題歌にしていました。We are young♪ なんてフレーズと、自分たちの道を行くという若者の声の代弁という感じでしょうか。
リスナーからの意見として、「役者たちが10代に見えない」というものがあって、ディレクターとも打合せで話が盛り上がったのは、衣装のこと。確かにみんなバラバラで、それぞれに個性を出したかったというのはあるんでしょうけど、そこは制服でも良かったんじゃないでしょうかね。私服にすることで、むしろ大人びて見えちゃうという逆効果があった気がします。彼らには到着順に番号が付いてるけど、その匿名性から少しずつ人間性の違いが浮かび上がるっていうお話なら、匿名的な服装でいいと思うんです。制服にも色々あるし、着こなしで人となりは出せるわけだから。そうしていれば、数日前に番組で盛り上がった、「北村匠海くんの衣装の薄手の白シャツから下のランニングが透けていて気になる問題」も生まれずに済んだわけだし(笑)
さ〜て、次回、2019年2月7日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『メリー・ポピンズ リターンズ』です。もうディズニーの釣瓶打ちです。しかし、なぜ今メリー・ポピンズなんでしょうか。気になる。僕はまだ今回の続編への知識がまっさらな状態ですが、あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!
映画『マスカレード・ホテル』短評
でも、とりあえずそういう弱点は置いておこうって思えたのは、はやり木村拓哉と長澤まさみの放つ存在感でした。人を疑う刑事と、人を信じるホテルスタッフ。水と油のふたりですよ。ところが、登場する宿泊客たちが巻き起こす騒動をひとつひとつやり過ごしていくうちに、木村拓哉はだんだんホテル従業員らしくなり、長澤まさみは推理を働かせるようになる。水と油が乳化して強力なバディーになる。そのプロセスを愛でる映画と言っていいでしょう。
リスナーからも届いた指摘でしたが、僕も思っていたこと。ホテルが舞台なのに、高嶋政伸(弟)を使わず、高嶋政宏(兄)をキャスティングするんだ! それは何か、ドラマの「HOTEL」がTBSだからなのか。勘ぐりすぎか。とにもかくにも、僕としては、これは「姉さん、事件です」と言いたくなる案件でした。
さ〜て、次回、2019年1月31日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『十二人の死にたい子どもたち』です。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!
『クリード 炎の宿敵』短評
それぞれのその後を見せるエピローグにグッと来た方も多いでしょう。ロッキーも自分の人生を総括し始めていました。言わば、終活ですよ。そこで出てくるあの子! あのかわいさは完全に反則でした。
さ〜て、次回、2019年1月24日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『マスカレード・ホテル』です。キムタクが刑事で、長澤まさみがホテル勤務。そして、東野圭吾原作。ヒットが約束されたような豪華なメンツが揃っていますが、こういう時こそ冷静に評したいもの。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!
映画「いつだってやめられる」三部作DVD-BOX発売記念レビュー
十数年前、私が大学院に進学した頃の大学には、改革の波が到達していた。イタリア関係の学術界はもともと大きくないこともあって、ある先輩は大学でイタリア語を教えたいと夢見ていたものの、諦めることにしたようだと聞いた。別のある先輩も、そこで生きていこうとしているけれど、講師を務めるあちこちの大学での授業の準備に追われて、とても研究まで手が回らないと言っていたように記憶している。教員のポストには任期制限付きのものが増えていて、大学を職場にするのも難しいものだなと思っていた。さらに近年では、京大の立て看板や吉田寮の話に聞くように、自由な空間も次々に奪われている気がしてならない。
「いつだってやめられる」は、そんな学術の世界に身を置いて、肩身の狭い思いをしながら生きてきたインテリたちのコメディ三部作だ。
主人公のピエトロは、研究員として稼ぐなけなしの収入を奪われることになってしまった。収入の補いに家庭教師の仕事も掛け持ちしていたため、せめて滞納中の月謝を払ってもらおうと、ある夜、教え子の少年を追う。その過程でみじめな目に遭った後、アイデアがひらめいてインテリ仲間を招集、合法ドラッグでひと儲けを企む。
これがシリーズ一作目、『いつだってやめられる―7人の危ない教授たち』のストーリーだ。2014年の制作ということは、私が大学を出て、5年ほど経った頃。以前から若者の失業率が問題になっていたイタリアだ。研究者も日本と同じように(もしくは、日本よりも)厳しい状況にあった。また、日本で「脱法ハーブ」という言葉がニュースをにぎわせていたのも、記憶に新しい。そんなテーマをコメディに仕立てて、劇場を笑いで沸かせた本作は大ヒットを記録した。
それで続編として制作されることになったのが、二作目の『いつだってやめられる―10人の怒れる教授たち』と、三作目の『いつだってやめられる―戦う名誉教授たち』だ。こちらは二作でひと続きのストーリーになっている。
かのインテリ・ギャング団には新しい仲間が合流し、今度は合法ドラッグの撲滅に力を貸す。任務の完了がすぐそこまで迫ったとき、ドラッグの影に隠れて別の犯罪が計画されていることに気がつき、物語はさらに展開する。
この続編は≪悪に立ち向かう正義≫の定型に近づいてしまうのかなと、期待しないようにしている部分もあった。でも、そう単純にはいかない。一作目のエピソードを利用して、全てがはじまる前の登場人物たちの接点が描かれるなど、心にチクリとトゲが刺さるよう な仕掛けがしてあり、鑑賞後には、鈍い痛みが余韻として残る。
そしてなにより、この三部作の一番の魅力は個性豊かなインテリたちだ。
副題にあるように、このシリーズにはインテリだけで7人とか、10人とかいう数の人物が登場する。人物を把握するのが苦手な私にとっては、多い。多すぎる。ところが、全員を簡単に覚えられてしまうのだ。セリフにも、ふるまいにも、それぞれの専門性が際立っていて、いちいちキャラクターが濃いので間違えようがない。
身を呈して資金を調達する経済学者に、どんな人物にもなりすます人類学者。ドラッグを製造する計算科学者はその使用感をどうしても正確に調査したくて、結局、自分で試してヤク中に陥る。輸送係の考古学者は車で遺跡を疾走して、古代ローマの文化財を破壊、死んで詫びると取り乱す。それはオリジナルではなく、帝政期のコピーだから気にするなと慰めるのは、ラテン語学者だ。
自分の興味に逆らわず生きてきた彼らは少年のようで、滑稽で、面倒くさくて、愛おしい。まっすぐな姿は笑えるし、泣ける。
そんな彼らが躍動する映像は、シリーズを通じて原色の強い鮮やかな色彩をしていて、この物語はフィクションだと語っているようでもある。
では、現実はどうだろう。大学の改革はピエトロの荒稼ぎのアイデアと同じように、「いつだってやめられる」と思ってはじまったかもしれない。その流れの先にある今、私利私欲のために、人を傷つけるために、恵まれた頭脳を使わせてしまっていないか。誰もがどこかに持ち合わせているだろう、人の役に立ちたいという思いを踏みにじっていないか。そんなことを考えさせられる。
文:京都ドーナッツクラブ セサミあゆみ
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』短評
とあるシーンで、爆弾ジョニー演じるコピーバンドがオープンスペースでこの曲を演奏。歌詞の物語へのリンクもあり、素敵にハジけた映画全体の節目を作っていました。
さ〜て、次回、2019年1月17日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『クリード 炎の宿敵』です。ついに来てしまいました。あの『ロッキー』シリーズに連なる『クリード チャンプを継ぐ男』の続編! 前作をコーナーで扱ってなかったんですよね。心して迎え撃つとしましょう。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!