京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

スター・トレック:未来のスタート

どうも、あわてんぼうのモスキートに寝込みを襲われた僕です。思い出せば、去年は去年で晩秋の電車内で蚊の残党に吸血されました。そんな記憶をたどると、今の痒みがいや増します。

さて、そんなバッドコンディションではありますが、話は『スター・トレック』ですよ。今日から全国で公開になりましたね。僕は一足先に試写会で鑑賞させていただきました。

スター・トレック」シリーズ、僕は正直なところまったく無縁だったんですよね。世代的なこともあるのかもしれないですけど、あのテレビシリーズはローカルなTV局で深夜にやっているのをちらっと見たことがあったような、とかそんな漠とした経験しかなかったんです。なので、劇映画がこれまでに10本も作られていたなんてまったく知りませんでした。なので、正直なところ、試写の案内をいただいたときに、「どうしようかな…、ついていけるかな」と思ったぐらいなんですが、チラシにはリ・イマジネーションという文句が踊っていたんで、それならやっぱり観ておくかと梅田に向かいました。

監督は『LOST』や『M:i:Ⅲ』のJ・J・エイブラムス。この人がSFで張り切ったら、とかくそのヴィジュアル・エフェクトが目立つ、僕からすればしんどい作品になるんじゃないかと、試写室のシートに腰を落ち着けてからも、まだ期待よりも懸念のほうが上回っているような状態でした。だって、66年に創られたオリジナルだって、今見ればどうしたってちょっとレトロな感が拭えない造詣が魅力だったりするんじゃないかと、知らないながらに勝手に思っているんで、そこにあまりごちゃごちゃと最新鋭の技術をてんこ盛りにされると、逆に興がそがれるだろうという心配ですね。

ところがどっこい。これが魅力あふれる一級のエンターテインメントでした。僕の先入観は杞憂以外の何物でもなかったですね。パンフレットによると、この作品には最先端のエフェクトを使用したショットが1000以上もあるそうなんですが、監督がそんな技術をこれみよがしに見せることよりも、船長カークと副船長スポックというふたりの戦友、しかもキャラクター的に両極端なこのふたりがいかにして固い絆を持つにいたったか、その極めて人間臭いドラマを軸に据えたことが功を奏した結果でしょう。

トレッカーと呼ばれる、「スター・トレック」マニアを喜ばせるシリーズのお約束事もたくさんあるんだろうな、ということは観ていてもよくわかりました。よくわからないんだろうけど、わかる人にはわかるんだろうな、という意味でよくわかったということです。監督が非トレッカーなぶん、脚本家には膨大な知識を持ったトレッカーを起用したそうなので、そのへんのバランスがうまくいったんでしょうね。僕も楽しめるし、マニアももちろん楽しめる、この難題を見事に解決したという印象でした。

キャラクターのしっかりした船員たち。なんだかんだ結局は殴りあったり撃ち合ったりする程よいアナログさ加減。そういえば、ある星に人間たちが着陸するときの道具はパラシュートでしたからね…。緊張を強いる場面で的確に挿入されるユーモア。優れた娯楽作品の条件をしっかり備えていました。

ただ、途中で唐突にジュラシックパーク化するシーンがあって、そこは「なんだなんだ」と違和感を感じました。その辺から途端に時間軸がややこしくなったりして、少々大変でしたが、それでもスピード感ある演出で僕たちを有無を言わせず連れてまわしてくれるんで、とりあえずまあいいか、と思わせるのは、僕みたいなぼんくらな客も取りこぼさない監督のうまさなんでしょうね。

この物語は言わば、スター・トレックのエピソードゼロ、未来のスタートです。今後また続編が作られるのかは知りませんが、40年前のオリジナルをたどりたくなることは間違いないですね。ああ忙しい…。大画面の喜びをこんなに楽しめる作品も昨今少ないと思います。ぜひ、劇場で。

それでは皆さん、また非常に近い将来に。