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僕・野村雅夫が選ぶ、イタリア映画の巨匠たちによる、知られざる名作シリーズ。
『愛と殺意』『狂った夜』『三人の兄弟』『ゴールデン・ハンター』『醜い奴、汚い奴、悪い奴』の5作品から、今回ご紹介するのはこちら。
『狂った夜』(原題:La notte brava)
これは、名匠マウロ・ボロニーニ監督の初期作のひとつで、ピエル・パオロ・パゾリーニがまだ自分の監督デビューの前に、自分の小説を原作に脚本を提供した作品です。戦後ローマの下層階級の若者たちの、無軌道で刹那的な一夜を描く青春群像劇になっています。ものを盗んでは売りさばいて遊ぶ金を得ている青年ふたりと、路上の美しく肝のすわった娼婦たち、そして途中からは金持ちの若者たちも巻き込んで芋づる式に話が展開していきます。
1959年、イタリアでは戦後の香りが残りつつも経済は驚異的な回復をみせ、社会には格差が生まれています。この映画でも、出てくるキャラクターの多くは、みんな金、金、金と、がむしゃらです。たとえ仲間でもすきあらば裏切る気満々、自分だけが金を手にしようという騙し合いも見どころのひとつ。
美男美女のキャストに当時のファッション、軽妙なセリフの掛け合い。ただ、結局、ボロニーニが描きたかったのはなんなのか?と考えてみる、そのきっかけは、実は冒頭に布石が打ってあります。
当時の映画はオープニングにクレジットが出ます。そのオープニングクレジットの間、謎の写真がずっと映し出されています。はじめは「これ、何の写真?」とまったく意味がわからないんですが、映画のラストシーンで判明します。それがまさにこの映画のテーマを象徴しているもの……。なので、どうぞ覚えておいてください。
彼らは、考えてみたら、お金はほしいくせに、妙に金離れがいいんです。いざお金を持ってみると、「俺達、何してるんだろう?」と虚しさに取りつかれることになる。それは金持ちの若者たちも同じで、結局は満たされていないご様子。なまじお金を与えられてしまっているので、貧乏人たちに比べて気づきは訪れず、ある意味では彼らの方が不幸かもしれません。
このあたり、わかりやすく語られているセリフがあります。
「大体 金持ちが幸せか?」
「そうね 私達足りないものないし 若くてぴんぴんしてて とことん楽しめるし 年に一晩で十分 明日 夕飯抜きでも平気 今夜は楽しかったから 明日は神頼み いいじゃない」
また、湿地にしけこんだルッジェーロと娼婦のひとりが、スプリンクラーの水を浴びながら恍惚となるシーンは象徴的です。とにかく相手を出し抜いてやろうと生きる悪党の彼らが、ここでは純粋に生の喜びを実感している。本作中でいちばん美しく描かれているのがこのシーンだといっていいと思います。
彼らが欲しかったのは金ではなく、生きている実感だったんですね。拝金主義的な社会のあり方に警鐘を鳴らし、別の価値観を提示しているという意味で、これは普遍的なテーマを扱った作品だと言えるのではないかと僕は思っています。
この作品、そしてそのほかの僕が選んだイタリア映画も、ぜひスターチャンネルでお楽しみください!
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■作品情報
狂った夜
LA NOTTE BRAVA
1959年/イタリア/97分
監督/マウロ・ボロニーニ
脚本/ピエル・パオロ・パゾリーニ
撮影/アルマンド・ナンヌッツィ
音楽/ピエロ・ピッチオーニ
製作/アントニオ・チェルヴィほか
■キャスト
ルッジェーロ:ローラン・テルズィエフ(『脱獄十二時間』)
シンティッローネ:ジャン=クロード・ブリアリ(『いとこ同士』)
ベッラベッラ(故買屋の甥):フランコ・インテルレンギ
スプリツィア(娼婦):アントネッラ・ルアルディ
アンナ(娼婦):エルザ・マルティネッリ
ニコレッタ(娼婦):アンナ・マリア・フェッレーロ
ラウラ(女中):ミレーヌ・ドモンジョ
ロッサーナ(元カノ):ロザンナ・スキャッフィーノ