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京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『ナイスガイズ!』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2017年2月24日放送分
『ナイスガイズ!』短評のDJ's カット版です。

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妻を亡くし、13歳の愛娘とふたり暮らしの私立探偵マーチ。酒ばかり煽りながら、冴えない依頼を冴えない仕事ぶりでこなし、冴えない日々を送っている。示談屋のヒーリーは、頭というより腕力に物を言わせて物事を解決するタイプだけれど、女子どもは尊重して守るべきだという正義感に基づいて行動している。ある女性の捜索をきっかけにコンビを組んだふたりは、ある映画にまつわる連続殺人事件と国家レベルの陰謀に巻き込まれていくクライム・アクション・サスペンスといったところ。ま、全体としてはコメディーだけど。
 
探偵のマーチは今をときめくライアン・ゴズリング。凸凹コンビのお相手ヒーリーをラッセル・クロウが演じています。さらに、水原希子に顔の雰囲気がちょっと似てる13歳の娘は、アンガーリー・ライスが担当。アンガーリーちゃん、今後もっと演技を観てみたいかわいこちゃんでした。
 
監督は「キスキス・バンバン」や「アイアンマン3」のシェーン・ブラックが務めています。今週も3分間で映画短評、それではアクション!


この映画が気に入らない人は、その欠点をこうあげつらうかもしれません。なんだかんだごちゃごちゃ展開した割に、謎解きのカタルシスが弱いとか、悪役のキャラクターが弱いとか、二度あるパーティーの場面が似たり寄ったりだとか、どうでもいい話の枝葉が多いとか。僕はこの映画かなり気に入っているので、ひとつひとつ反論して擁護していきます。

 

謎解きのカタルシスが弱い? 『ナイス・ガイズ!』の見どころはあっと驚くどんでん返しにあるんじゃなくて、ライアン・ゴズリングラッセル・クロウのコンビそのものです。イケメンだけど、うだつが上がらない。飲んだくれだけど、決める時には決めたくて、その度に見事にしくじってる。推理も当たりそうで当たらない。当たってもまぐれ当たりなマーチ。「ジーザス!」などとビビってしょっちゅう裏返る声とその機敏だけど無駄な動きが最高でした。担当はボケです。
 
そのお相手は、対象的に、もはや熊としか言いようがない体躯のラッセル・クロウ。少々しんどそうな動きだけれど、その分凄みと重みを備えていました。だいたい対処が遅れがちではあるものの、それなりに冷静ではあって、その遅れを腕力で取り戻している感じのヒーリー。担当はツッコミです。
 
基本的にふたりとも小物です。そんなふたりがなぜこんな大事に命を懸けるのかわからないという人もいるかもしれませんが、そうじゃなくて単に巻き込まれてるんです。最初から事の真相がわかっていれば引き受けていたかどうか怪しい。まさに凸凹なコンビの中年が漫才よろしくボンクラな会話とトンチンカンな行動を取るうちに、謎がたまたま解けただけのこと。ホームズじゃないんですよ。その珍道中的プロセスこそ本筋なんです。だから、枝葉が多いという意見も却下! 枝葉が幹なんです。それに、枝葉だって、その大部分が伏線として後に回収されてましたからね。
 
悪役のキャラクターが弱い? 主役のふたりが強すぎるだけのことです。プラス、マーチの娘がいますからね。彼女がまたマセてて最高なんだ。マーチが父親ならこうなるか。13歳にして父ちゃんのハンドルキーパーまでやってのけますから。「パパは世界でも最低の探偵」と言い切るわりには、マーチのそれっぽい推理にはちょっと感心しちゃったりなんかして。褒められたもんじゃないけど、微笑ましい関係性で、互いに求め合ってる。
 
二度あるパーティーの場面が似たり寄ったり? 天丼という繰り返しのギャグとその効果はご存知ですよね? ゴズリングは今作で何度落下するんでしょうか。人生でも落ちぶれてるのに、彼はそこかしこから物理的に落っこちますね。なのに特に学びませんね。「またやってるよ〜」というルパン三世的な繰り返しの美学と快楽を追い求めた意図的演出だと僕は思います。
 
汚い言葉は多いし、そこそこエグい場面もあるし、それこそ無駄なお色気サービスもあるんですけど、この過剰さが魅力。オープニングの展開にはビックリしたでしょ? そんなバカな! 途中から出てくる非常な殺し屋のトゥーマッチぶりも良かったですよ。そこでマシンガン要るか? 殺し屋のいるところへ乗り込んでいく凸凹コンビがすごすごと引き返すくだりのブラックジョークも最高です。人が痛い目にあってるんだけど、笑うしかないでしょ、あれは。
 
70年代半ばが舞台でありながら、陰謀がアメリカの自動車産業を巡るものだっていうのも、トランプ政権下の現在アクチュアルです。陰謀が渦巻くきっかけとなる不正も、日本も含めヨーロッパでも残念ながら最近話題になったし、これまた今っぽい。でも、そのいずれも、単なる偶然の賜物だろうってこともこの映画っぽくていいです。
 
以上の理由から、僕はこの親子と熊の3人が大好きです。黄金のトライアングルとも言うべきこいつらのしょうもないハッスルを、ファンキーでグルーヴィーな音楽とともに、ぜひもう1本くらいは同じ座組で観たいところです。


さ〜て、次回、3月3日(金)109シネマズ FRIDAY NEW CINEMA CLUBで扱う映画 aka「映画の女神様から授かったお告げ」は、『ラ・ラ・ランド』です。またもやゴズリング! あなたも観たら #ciao802を付けてのTweetをよろしく!