京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

映画『Diner ダイナー』短評

FM802 Ciao Amici!109シネマズDolce Vita 2019年7月11日放送分
映画『Diner ダイナー』短評のDJ's カット版です。

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舞台は殺し屋専用のダイナーです。オーナーはエリアを牛耳る殺し屋たちの長。料理の腕を振るうのは、やはり元殺し屋の天才シェフ、ボンベロ。そこでウェイトレスとして働くことになったのは、破格の給料に惹かれて手を出した怪しいアルバイトの最中に身売りされてしまったオオバカナコという20代の孤独な女性。組織内の殺し屋の権力闘争もくすぶり始める中、一筋縄ではいかない、クセの強い殺し屋たちを、ボンベロとカナコはもてなすことはできるのか。
原作は、ホラー作家平山夢明が2009年にポプラ社から出版した同名小説です。監督は、写真家の蜷川実花。映画は『さくらん』『ヘルタースケルター』以来ですから、久しぶりなんですが、9月にはもう新作『人間失格 太宰治と3人の女たち』を控えています。旺盛ですね。
 
キャストは、オオバカナコを玉城ティナ、ボンベロを藤原竜也が演じています。ダイナーにやって来る殺し屋たちに扮するのは、窪田正孝本郷奏多(かなた)、武田真治。他にも、各エリアのボスたちとして、土屋アンナ小栗旬、真矢ミキ、奥田瑛二が配役されつつ、有名人があちこちに顔を出しています。斎藤工佐藤江梨子川栄李奈コムアイ板野友美木村佳乃、そして3年前に他界された監督のお父さん、蜷川幸雄など。
 
それでは、制限時間3分、感想ひとつで消されることを覚悟の映画短評、そろそろいってみよう!

「俺はここの王だ。砂糖の一粒まで俺に従う」というシェフ「ボンベロ」の台詞が予告編から印象的だったこの作品。最もこのスピリットを実践しているのは、ボンベロというよりも蜷川実花、監督だったと思います。画面に映るすべての要素をコントロールして自分の美意識を具現化したいっていうことですよ。写真ならいざしらず、映画でそれをするのは、しかも実写においてはかなり大変ですけど、とにかくスクリーンを蜷川実花ワールドに染め上げたい。そんな欲望が何よりも優先された作品です。
 
冒頭、かなこのモノローグ、主観的なひとり語りがありました。いかに疎外感を抱えてひとりぼっちで生きてきたのか。彼女は語り手として登場するわけですが、その後、ダイナーに入ってからは、メイドの格好でひたすら理不尽な目に遭い続け、ナレーターとしての機能はほぼ失う。今度は蜷川実花のカメラワークがその役割を担います。そこでのポイントは、監督の世界観が物語にすら優先されるということです。ほぼ密室劇の全編セットだってのも、そのためでしょう。

 

物語が始まる時には、そこでの約束事というのが前半で示されることが多いですね。この作品でも、ありました。たとえば、店には扉が3つあり、そのひとつひとつに据えられた監視カメラで、ボンベロは店にそぐわない人物がやってこないか、客を選別するというもの。その後、物語であのシステムは活用されましたっけ? むしろ、困った客に苦労させられてませんでした? 扉、開けなきゃ良いのに。

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まあ、でも、別に僕はそれで構わないとも思うんです。そういうタイプの監督はもちろんいるし、それ自体決して悪いことではない。ただ、これは2時間の娯楽劇映画であって、写真やMVではない。だとすれば、原作のある物語を隠れ蓑にするにしたって、もう少しくらいは物語然とできないものでしょうか。だって、カナコがなぜ母親からネグレクトされていたのか。僕はうまく説明できないんですよ。幼稚園のお遊戯会や演劇を導入する演出は覚えてるのに。
 
東西南北の殺し屋たちの権力闘争と、亡くなったボスの死の真相についても、クライマックスでの花びらいっぱい、色いっぱい、スローモーションいっぱいの演出は覚えてるけど、結局なんだったんだっけ? やはりピンとこない。
 
挙句の果てには、肝心の料理も色に埋もれておいしそうに見えない。それは別にいいとしても、ボンベロの料理がどうすごいのか、その技を見せるショットがひとつもない。

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これ、全体のテーマとしては、自分の存在価値をどう扱うのかだと思うんだけど、今挙げたような物語的な悪条件が重なった結果、テーマとリンクするいい感じの台詞が出てきても、その時はなるほどと思っても、いつも刹那的にしか響かないんです。それぞれのシーンが前後とうまく連なってないからですね。
 
蜷川実花のビジョン、世界観をとやかく言うつもりは僕には毛頭ありません。それは好みの問題です。演出に映画的なブランニューワンが欲しかった。あのスローは新しくないし、他は主に演劇的、写真的、漫画的、絵画的でしたから。せっかく映画というメディアを使うならこんなことをやってみるというアイデアと、形だけでも隠れ蓑でも良いから連続性をもった物語にしていれば、「愛でる作品」にとどまらず、「愛せる作品」と捉える人がもっと増える気がします。

 主題歌は曲としてはとても良いと思うんですが、『千客万来』とはとても言い難い、むしろ会員制のダイナーが舞台なんだけど、これいかに…


さ〜て、次回、2019年7月18日(木)の109シネマズ Dolce Vitaで扱う映画 aka「映画の女神様からのお告げ」は、『トイ・ストーリー4』です。先日、1を見直そうとアマゾン・プライムでレンタルしようとリモコンを操作したら、誤って購入してしまいました。198円のつもりが、2000円の出費です。面白くない状況ですが、4も間違いなく面白いことでしょう。あなたも鑑賞したら #まちゃお802 を付けての感想Tweetをよろしく!