京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

エドアルド・レオ特集上映より 監督としてのレオ

子どものころは俳優をするなんて、一度も考えたことがなかった。

この一文から始まるエドアルド・レオのホームページのバイオグラフィが面白い。キューブリックにはまって、履歴書に嘘のキャリアを書き、イエローページでみつけた芸能事務所に送り付けると、その履歴書を信じた事務所が、大事な映画のオーディションにレオを送り込むが、彼は一時間遅れで到着する。そんな感じでオーディションを繰り返し、なんとか端役を手にしたのがデビューのきっかけだ。

バイオグラフィの最後は、好きなアーティストの羅列で終わる。コーエン兄弟セルジョ・レオーネバスキア、ローマ方言の詩人ジョアキーノ・ベッリ、キース・ジャレットブルース・スプリングスティーン、そしてなんといってもエットレ・スコラが好きとのことだ。

2017年、レオの監督としての第四作『どうってことないさ』(Che vuoi che sia)がイタリア映画祭で上映されるのに合わせて来日したことがあった。その彼に、文化会館のはからいでインタビューさせてもらった。私は上記のバイオグラフィを引っ張り出して、キューブリックで始まりエットレ・スコラで終わるこの雑食ぶりを、自分のなかでどのように消化してアウトプットしているのかという話をしようとした。ところがレオからは早々に「そもそも、これは僕のバイオグラフィじゃないよ」と、意地悪な冗談でかわされてしまった。インタビューはまったくうまくいかなかったが、最後にこんなことを言い添えてくれた。「僕の映画は近所の肉屋からは楽しいと言われ、知り合いの新聞記者からはインテリだと評される。僕は肉屋にインテリと言われ、記者から楽しいと評される映画をつくりたい」

このエピソードを弊社野村に語ったら、「それってうまいこと言ってるようで、よく分からん映画を見たときに言うやつやん」と突っ込まれた。確かに、うまいこと言いたがるイタリア人らしいロジックのように思えるが、要は、芸術に造詣の深いインテリも唸らすほどのエンタメ映画を撮りたいということではないだろうか。その気概を、レオの監督映画を見ていてひしひしと感じる。

俳優としてブレイクする前から、彼はコンスタントに監督として映画をつくり続けてきた。第一作は2010年の『18年後』(Diciotto anni dopo)。母の事故死をきっかけに話すことのなくなった兄弟ミルコとグラツィアーノは、それが尾を引いて18年間まったく会話をせず、離れて暮らしている。父親の葬儀で久しぶりに再会したふたりは、父の遺言に従い、亡くなった母のお墓まで父の遺骨を運ぶたびに出かける。監督を務めたレオは、主人公で吃音のミルコを演じている。

第二作は今回の特集上映でも上映される2013年の『ブォンジョルノ、パパ。』(Buongiorno papà)。40過ぎのアンドレアは映画業界で働くやり手の色男。高級車を乗り回し、ローマ市内のオシャレなマンションで悠々自適に暮らしている。彼とハウスシェアしているパオロは、仕事も女性関係もうまくいっていないが、大道芸で一旗揚げるロマンチックな夢を胸に抱いている。そんな彼らのもとに、アンドレアの娘だと名乗る十七歳の少女レイラが現れ、生活は一変してしまう。ここでレオは、主人公を上手にフォローする友人パオロを演じている。

この初期二作のテーマは明らかに家族だ。それぞれ両親の喪失、娘の出現という極限のシュチュエーションをつくり出し、家族の在り方と、それが再生していく様子を描いている。

f:id:djmasao:20201016094234j:plain

パオロ(エドアルド・レオ)とレイラ。『ブォンジョルノ、パパ。』の一場面。

 

2015年の第三作『俺たちとジュリア』になると趣が少し変わる。人生に行き詰まりを感じた車のセールスマンのディエゴ、通販番組の司会者ファウスト、町の総菜屋クラウディオの3人は、古い農場を共同購入し、ファームホテルにリノベーションして再起を図る。気性の激しい元武闘派共産党員、タトゥーだらけの妊婦という超個性的な面々を仲間に加え、絶妙なチームワークで準備を進めるが、クラシックカー「ジュリア」に乗ったカモッラが現れ、上納金を要求する。

家族というテーマが影を潜めたように見えるこの作品も、実は亡くなった父に語りかける形で、主人公ディエゴのナレーションが入る。物語の最後には、今までにない人生の冒険に挑んだ旨を亡父に報告し、人生の意味を反芻する。そして「フランチェスコとアニータへ」というテロップが添えられて物語は終わる。フランチェスコとアニータというのは、エドアルド・レオの実の子どもだ。人生の意味を我が子に伝えるという意図がこの映画には含まれているのだ。

三作目は彼が一貫して持っているテーマに加えて、人生を失敗した男の再生劇がコメディ・タッチで描かれており、よりエンターテイメント性が増している。つまり、彼の目指す映画の形に近づいていることが伺える。その傾向は2016年の第四作『どうってことないさ』にも受け継がれ、そして現在は2021年に公開予定の『いつかローマで別れることになる』(Lasciarsi un giorno a Roma)を準備中だ。果たしてインテリに楽しいと評される作品は完成したのか。心待ちにしたい。

f:id:djmasao:20201016094448j:plain

左からディエゴ、元共産党員のセルジョ、総菜屋のクラウディオ、通販の司会ファウストエドアルド・レオ)。『俺たちとジュリア』の一場面。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そしてイベント開催にあたり、難しい状況下でイベントの意義を汲み賛同してくださった協賛社さま、ありがとうございました! 今回は、イタリア産のワインとフードの輸入を手がける日欧商事をご紹介。

 

「私たちはイタリアのスペシャリストです」のモットーの下、「本物のイタリアの味」を日本の消費者に紹介しています。

イタリアのトップブランド、トップクォリティーの商品の提案において最も先進的で機動的であること、それがJETの強みです。

1981年に設立以来、JETは常にイタリアワインと食材の市場をリードしてきました。

現在、JETはイタリアの全20州からトップブランドの名にふさわしいワインを揃え、ガストロノミーの発展のため、次世代の方々の成長のために、商品だけでなく、豊かな食と文化の活性化を目指しています。

その特徴は、イタリアの食文化と人、そして食品マーケットに精通しているイタリア人のオーナーとスタッフが「素材」と「味」をリサーチし、選んでいること。

イタリアとの幅広く、太いパイプとコミュニケーションにおいて、他社の追随を許さない際立ったノウハウといえます。

 

イタリアの食文化を通し、日本とイタリアの架け橋になることを使命としています。 次世代に続く、豊かな食文化の発展のために活動していきます。 

公式ホームペ-ジ

公式Facebookアカウント

公式youtubeチャンネル

f:id:djmasao:20200913214948p:plain