京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

エドアルド・レオ特集上映より 『ブォンジョルノ、パパ。』邦題について

「スッチャーデスさんボンジョルノ」とオザケンが早口で朗読したダースのテレビCMが流れていたのは、もうかれこれ25年前のこと。「おはよう」や「こんにちは」を意味するこの「ボンジョルノ」という言葉が曲者で、分解すると「ボン」(良い)、「ジョルノ」(日)となるのだが、「ボン」の実際の発音は明らかに「ブオン」に近い。カタカナ表記では忠実に原語の発音を再現できないため、イタリア語に限らず、この手の間違いは多々ある。間違ったカタカナ発音が流布して独自の日本語になった例もある。有名どころでは“white shirts”が「ワイシャツ」などだ。これら間違ったカタカナ発音を、自らの生業にしているイタリア語でまかり通らせてよいのかという葛藤を日々感じている。「ボン」と書くことで、どこかイタリア語を日本語から遠ざけているような、罪の意識にさいなまれるのだ。ちなみに「ボーノ」(おいしい)も、「ブオーノ」と発音するほうがもともとの発音に近いし、よりおいしそうじゃないですか?

この発音の是正を提唱したのが、なにを隠そう弊社代表の野村雅夫である。日伊ハーフの彼は、イタリア人の母親に指摘を受けたらしく、以降SNSでの挨拶は、「ボンジョルノ」ではなく「ブオンジョルノ」と記すようになった。

そんな細かいこと言わずに、別に「ボンジョルノ」でいいじゃんという言い分も、よくわかる。例えば、ベトナムのもとの発音に近いのは「ヴェットナム」だと指摘する向きもあるが、日本で浸透している「ベトナム」でなんら問題ないし、なにより言いやすいではないかと思えてくる。結局は、原語の発音を正確に再現するのが難しいカタカナの中で、どこで折り合いをつけるかという問題になってくる。ただ、イタリア語を話す身としては、多少面倒くさいと思われても、「ボンジョルノ」ではなく「ブオンジョルノ」と書きたくなるのが人情だ。

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『ブォンジョルノ、パパ。』の1シーン。レイラ役のロザベル・ラウレンティ・セラーズ(左)とおじいちゃんと呼ぶのを怒るおじいちゃん役のマルコ・ジャッリーニ(右)

さて、京都ドーナッツクラブでは”Buongiorno, papà”の邦題を『ブォンジョルノ、パパ。』とした。野村式の「ブオンジョルノ」よりさらに忠実に、”Buon”の母音の連続“uo”を意識して「ブォンジョルノ」と、もう一段階面倒くさくしたのだ。前回のブログですでに紹介したとおり、『ブォンジョルノ、パパ。』は父と娘のヒューマンドラマだ。40過ぎの色男アンドレアのもとに、娘だと名乗る17歳の少女レイラが突如現れる。話を聞いてみると、アンドレアがまだ若かったころ、ひと夏のバカンスで関係を持った女性の子どもらしい。母親はもう亡くなってこの世にいない。困惑するアンドレアだったが、DND鑑定でレイラが自分の娘であることが確定する。戸惑いながらも徐々に事実を受け入れはじめるアンドレアに対して、レイラは実の父の軽薄さを目の当たりにして嫌悪感を示す。

レイラが初めてのアンドレアの家を訪ねたときの挨拶は、「ブォンジョルノ」ではなく、「チャオ」だった。「ブォンジョルノ」よりも、簡易でフランクな挨拶で、知らない人にいきなり「チャオ」では、少し失礼な印象を与えることもある。「チャオ、私レイラ。あなたの娘よ」。もちろん彼女はアンドレアに対して「パパ」などと呼んだりはしない。だが物語が進むに連れて、紆余曲折を経て「ブォンジョルノ、パパ」と言える関係性にたどり着く。その言葉の重みを大事にするために、やや面倒くさくはあるものの、「ボン」でも「ブオン」でもなく、「ブォン」で折り合いをつけた。

アンドレアを演じたラウル・ボーヴァは、15歳のときに背泳ぎの全国大会で優勝するほどの有望な水泳選手だった。日本で全国公開されたリカルド・ミラーニ監督『これが私の人生設計』に出てくるゲイのレストラン・オーナー役の印象が強いかもしれないが、元スポーツ選手の体形と甘いマスクで、二枚目の色男役が多い。

レイラを演じたのは、ロザベル・ラウレンティ・セラーズ。イタリア人ドキュメタリー作家の父とアメリカ人女優の母のもと、1996年カリフォルニアで生まれたが、2004年に家族でローマに移住。以来、子役として多数のTVドラマに出演する。京都ドーナッツクラブが主催した「映画で旅するイタリア2016」で上映したイヴァーノ・デ・マッテオ監督『幸せのバランス』の娘役が素晴らしかった。こちらでは浮気をきっかけに社会的地位から転落していく父を支えるけなげな女の子を熱演していた。


映画『幸せのバランス』予告編

 

つまりそれぞれが得意とする役どころで共演したのがこの『ブォンジョルノ、パパ。』だ。その二人を取り巻くアンドレアの友人役エドアルド・レオと、レイラのおじいちゃん役マルコ・ジャッリーニの姿も、個性的で楽しい。

 

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POLPETTAのルーツはイタリア・パレルモにあります。パレルモから10kmも離れていない場所にMONDELLO(モンデッロ)という素晴らしいビーチがあります。別荘地としても知られるこの場所の時間の流れが大好きで、ここで仲間と靴作りをした経験がPOLPETTAのベースになっています。夏でも湿気のない清々しい空気が全ての色を変えてしまう。大人たちがお洒落をして夜の街に繰り出す。遊び心を忘れないパレルモっ子の気分です。

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