京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

宇宙服を着た猿とグラン・トリノの恍惚

どうも、僕です。

今月の頭に、休みを利用して貴船から鞍馬までのちょっとしたハイキングを楽しんできたんですが、手入れの行き届いた森を散策して、北山杉が織りなす美しい景色を眺めるという当初の目的以外にも、なかなか趣のある光景にいくつもお目にかかることができて、ひとしきり満喫できたので、ご紹介しましょう。

山火事は確かに危険です。煙草の不始末など、もってのほか。動物をモチーフにして、子供にも注意を促そうとする意図が十二分に伝わってきますね。ただ、よくよく見ると、不思議な動物が混じっています。寄ってみましょう。

この生き物は何なのでしょうか。そう、恐らくは猿なんでしょうね。腕や足の脇に曲線を添えることで、躍動感と焦燥感を表現したかったのでしょう。しかし、腰回り、上腕部、顔の輪郭あたりから伝わってくるのは、ここが宇宙空間であり、どちらかというと、躍動感というよりは浮遊感を醸し出しているように僕には感じられました。

あと、看板つながりとしては、これも気になりましたね。いったい何を啓発しようとしているのでしょうか。僕のぼんくらな脳の理解の範疇を軽々と越える、深遠な意図があるのやもしれません。

ところで、昨日は公開されたばかりの『グラン・トリノ』を観てきました。イーストウッドの監督・主演、最新作ということで、放っておいても何かと前情報が入ってきたもんで、どうしてもこちらもいろいろと予想してしまうわけで、逆に期待が半減していたんですが、そんなことはおかまいなしに、クリントはやってくれました。感動しました。映画館を出る頃には、「なんで公開2日目の日曜なのに、シネコンなのに、こんなに客が少ないんだ」と憤慨してしまったほどです。

銃を構えるイーストウッドの圧倒的な迫力。役者経験が皆無に等しいモン族の人々を見事に生かしきった演出力。朝鮮戦争のことや息子夫婦との諍いなど、映像で表現しないことでしっかり観客の想像力を喚起する構成力。78歳にしてあれだけのタフな演技と演出をこなした体力と精神力。シャッポを脱ぐとはこのことです。

異文化との接触をテーマに据える作品は、どの国や地域でも必然的に増えていますが、もっとも重要な作品のひとつとなるかもしれませんね。ぜひ映画館で。

それでは皆さん、また非常に近い将来に。