FM COCOLO CIAO 765 毎週火曜、朝8時台半ばのCIAO CINEMA 11月21日放送分
『マーベルズ』短評のDJ'sカット版です。
MCU、マーベル・シネマティック・ユニバースの中でアベンジャーズ最強と言われる女性ヒーロー、キャプテン・マーベルを主役に据えた第2弾です。ある理由からキャプテン・マーベルを憎む敵が姿を現した頃、宇宙ステーションに所属するエージェントで強大なパワーを覚醒させたモニカ・ランボー、そしてアベンジャーズの大ファンでキャプテン・マーベル大好きな女子高生ミズ・マーベル、さらにはキャプテン・マーベルの3人がコロコロ入れ替わってしまう謎の現象が発生。3人の女性はデコボコチームを結成して事態に立ち向かいます。
監督のニア・ダコスタさんは、まだすごく若くて34歳。スリラーとかホラー映画を手掛けてきた女性で、ヒーローものはこれが初めてですね。キャプテン・マーベルは、もちろんブリー・ラーソン。モニカ・ランボーをテヨナ・パリス、ミズ・マーベルと名乗ることになる女子高生カマラ・カーンをイマン・ヴェラーニがそれぞれ演じている他、アベンジャーズ計画の発案者たるニック・フューリーも登場するということで、おなじみサミュエル・L・ジャクソンも出演しています。
僕は先週金曜日の朝、TOHOシネマズ二条で鑑賞しました。それでは、今週の映画短評、いってみよう。
まず言っとくと、キャプテン・マーベルを始めとして、今回の女性ヒーローのトライアングル、すごく楽しいです。なんなら、今回ヴィランとしてメインとなるダー・ベンというザウイ・アシュトンという俳優が演じる女性も魅力的です。そこにあの猫ね、グースが大いに絡んでくるうえ、おなじみニック・フューリーも事態の交通整理役としてつとめて冷静を装いながら時折ボロが出る感じがチャーミングでした。MCUこれで33作目。この前が傑作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でしたが、今作は「たった」という言葉を選びましょう、「たった」105分でサクッと観られる、つなぎだけれどなかなかに愉快痛快な1本というスタンスで捉えたいところです。
もちろん、いささか不親切なところはありますよ。たとえばモニカ・ランボーなんて、一応前作にお母さんが出ていたとはいえ、配信シリーズの方の『ワンダヴィジョン』を観ていないと、あの青色したオーラ、超常的な能力をどうやって身につけたのかさっぱりわかりませんし、ミズ・マーベルとして認められることになる女子高生カマラ・カーンなんて、まったくの初登場なんで、「君は誰なの?」ですよ。一応、最低限、たとえばその女子高生カマラちゃんが家にあった腕輪バングルをはめたら、自分でもよくわからないままとんでもパワーが備わっちゃったという新鮮な驚きがあります。しかも、どういうわけだか、自分が大好きで漫画とか同人誌的に部屋で描きまくっていたあこがれのキャプテン・マーベルと入れ替わってしまうという驚き・戸惑い・嬉しさがないまぜになった感情はきっちり表現されているから、もうグダグダ説明するよりも僕らはしっかり興味と興奮を覚えるように仕上がっていて十分なんです。入れ替わりの理由なんてそんなの本人たちもわかったようでわからないレベルなんだから、深追いせずに、その現象に当然面食らいながらも、3人でなんとか順応して、練習して、合宿して、だんだんと使いこなしていくようになるシーンの会話と入れ替わり映像の楽しさたるや! 話が大きくなりすぎてしまいがちなヒーロー映画の愉快な寄り道原点回帰って感じがして、僕はとくにそこ、大いに気に入りました。だって、アベンジャーズ最強とも言えるようなキャプテン・マーベルと、普通の女子高生が一緒に縄跳びしてるって、面白いじゃないですか。
あと、ある理由からそれこそ寄り道をしなけりゃいけなくなって3人が立ち寄る水の惑星アラドナの設定がまた笑えるんです。歌わないと意思疎通できないというか、歌が言語っていう惑星なので、そこだけミュージカルになるんですよね。それがディズニーのオマージュっていうか、はっきりパロディーになっているのに、実はそこの王子とある人が夫婦で、それがまた政略結婚とか言い出すから、そのディズニーへの結構な踏み込みっぷりとその苦味ありなパロディーに関心すらしたぐらいです。
こんな具合に、細かいことはあの特殊猫のグースみたいにエイヤッととりあえず飲み込んじゃえばかなりの満足感ですよ。とにかくカマラちゃんの登場が一般人、そして地球の観客たる僕らの世界との接続を取り戻してくれているし、ご本人はパキスタン系の俳優さんですが、あのエキゾチックな腕輪が確かに家にあってもおかしくないという意味付けだけではなく、あの移民家族たちの存在もうまく機能していたように思います。マッチョな価値観とは異なる女性たちのしなやかな強さと連帯というのは、MCUの中でもこれから大事にしてほしいものだし、ニック・フューリーのように、これまた偉そうなおっさんとは対極にある上司像というのも好感が持てます。
正直、MCUにはついていけなくてもう良いかなと思いかけていた僕ですが、僕みたいなレベルの観客にもマーベル再合流をおすすめできるようなマーベルズでした。
番組で短評の前にかけたBarbra StreisandのMemoryもそうですが、既存の音楽の使い方で効果的で良かったものをもうひとつ。僕の評価した縄跳びシーンのあたりでは、これ。楽しい!
さ〜て、次回2023年11月28日(火)に評する作品を決めるべく、スタジオにある映画神社のおみくじを引いて今回僕が引き当てたのは、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』です。何を隠そう、幼少期に原作をかなり読みふけっていた僕なんで、鬼太郎は好きなんです。誕生のエピソードは中でもお気に入りというか、ゾクゾクときて子供心にかなりビビってしまったことを覚えています。今回はオリジナル要素も入るのかしら、どうかしら。さぁ、あなたも鑑賞したら、あるいは既にご覧になっているようなら、いつでも結構ですので、Xで #まちゃお765 を付けてのポスト、お願いしますね。待ってま〜す!