まずもって、どう考えてもハードルが高い続編を、皆の予想を超える出来栄えで作ってしまっています。オリジナルのスピリットをこれほど継承して、なおかつテーマを深めたり、技術的にも前に進めたりしているという点で、完璧な続編と言って差し支えないんじゃないでしょうか。
『ブレードランナー』が描いていたのは2019年という、言ってみれば再来年の話だったわけです。テクノロジーの飛躍的な進歩がある一方で、エネルギー問題と連動する環境破壊や食糧問題、グローバル化、そしてレプリカントという人間が生み出した新たなる奴隷との相克など、考えたくないけれど、現実の延長線上にありえる近未来をリドリー・スコットは見せつけた。でも、正直なところ、2017年に初めて『ブレードランナー』を観る人は、何度も焼き直された未来像なだけに、もはや新鮮には感じなくなっているわけですよ。
そこで、ヴィルヌーヴが取り組まなければならなかったのは、現実の2017年に我々が抱える諸問題を踏まえて、今から30年後にあり得そうな近未来を映像でポンと見せることです。あのLAが今度はこうなっているのかと、僕らに腕組みさせつつ、ワクワクでもゾクゾクでもいいけど、心を動かすこと。それができてるんだなぁ。LAの様子もちょこちょこ変化してはいるんだけど、ここはオリジナルファンへのサービスが多めというか、大胆には変えられない部分ですけど、今回眼を見張るのは、LAの外です。クラクラするほどおびただしく並べられた太陽光パネル。海水レベルが上昇して、LA居住区に流入しないように設けられた巨大な壁。住めなくなった地域に捨てられていく大量のゴミ。砂漠に飲み込まれ、放射能にも汚染されて放棄された娯楽産業都市。こうした悪夢的にシミュレーションされた未来を、バチッと決まった構図で不気味なまでに美しく見せます。さらに、とにかくオリジナルは画面が闇に沈んで暗かったんですけど、今回はその闇と雨にプラスして、雪の白、砂漠のオレンジも加わるもんだから、やっぱりゾッとする未来を見せてくれたぜ、スピリットを継承しつつアップデートしてるぜと気分が最高潮にアガります。今ここにある懸念の未来予想図がスクリーンにデカデカと映し出されるわけですからね。オリジナルを新鮮に感じなかった人でも、これならイケる!
もちろんパンフレットは買いました。写真はもちろん、内容もなかなか充実しているので、オススメします。関連本としては、とりあえずオリジナルの凄さがわかるものとして、町山智浩さんの『ブレードランナーの未来世紀』(新潮文庫)と、ブレードランナーを皮切りに映画そのものについても深く考えてみたいという方向けには加藤幹郎『ブレードランナー論序説』もプッシュしておきます(こちらは中古しかなくて5000円くらいするけど…)。慣れてないと読みにくいし独断もあるけど、面白いのです。