京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝を紹介する会社「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM COCOLOで行っている映画短評について綴ります。

エドアルド・レオ特集上映より 『黄金の一味』解説 

どうも僕です。ハムエッグ大輔です。恥ずかしながらドーナッツクラブに戻ってまいりました。ここ数年は個人で活動してたのですが、この度エドアルド・レオ特集上映実現のために、再びドーナッツクラブと手を組むことになった次第です。今日から数回にわたって映画の解説を担当させていただきます。まずは数日後になら国際映画祭でも上映が決まっている『黄金の一味』(Gli uomini d’oro)からご紹介。

 

トリノの郵便局に勤めるナポリ出身のお調子者メローニは、給与にも仕事内容にも不満を覚えている。年金を繰り上げて受け取り、コスタリカに新天地を見出そうとしていたが、政府の金融改革により、計画はふいになってしまった。そこで企てたのが、自分の運転する現金輸送車から、護衛の警官に気づかれないように、現金を略奪するという計画だ。小柄の親友ルチャーノを、輸送車後部の金庫に潜ませ、偽の札束と現金をすり替えさせるのだが、この作業の時間を稼ぐために、堅物の同僚ザーゴも共謀者に引き込む……。

2019年に公開されたヴィンチェンツォ・アルフィエーリ監督の長編第二作『黄金の一味』は、1996年にトリノで実際に起こった現金略奪事件を題材にしたノワール映画だ。あまり知られていないが、イタリアは、実話をもとにしたノワールの宝庫だ。その理由は実際に題材となるような事件がたくさん起きていたから。誘拐、監禁の果てに殺害された元首相、在位期間33日で不審死を遂げた法王、テロ準備中に誤爆死したとされる実業家などなど、過激な政治集団のテロが横行した70年代には、信じがたい事件がたくさん起こり、そのいくつかは映画にもなっている。

 

このようなノワールのなかでもエポックメイキングだったのが、2008年から2010年にかけて放映されたドラマ『野良犬たちの掟』(Romanzo criminale)だろう。ローマを牛耳る犯罪組織マリアーナ団の趨勢を描いた一大叙事詩で、これが社会現象と言ってもよいほどの大ヒットとなった。さらにナポリの犯罪組織カモッラの抗争から着想を得た『ゴモラ』(Gomorra)、ローマの行政とマフィアの癒着問題を脚色した『暗黒街』(Suburra)と、人気ノワール・ドラマの系譜が続く。だから『黄金の一味』の前情報をつかんだとき、トリノの現金略奪事件という題材が、これらのドラマに比べて、ネタとして弱いのではないかと危惧した。ところが映画を観て、それはまったくの杞憂だったことがわかった。

 

まず、その脚本の妙に着目したい。事件に関わった三人の主人公メローニ、ザーゴ、そして映画序盤ではほとんど姿を現さない第三の男ウルフが、それぞれの視点で事件を体験する、いわば黒澤明羅生門』方式になっている。主人公が変わるごとに、新事実が明かされ、事件自体はあっけないものなのだが、鑑賞者を飽きさせずに惹きつける仕掛けがたくさん施されている。緻密な脚本をアルフィエーリと一年かけて共同執筆したのは、エドアルド・レオ主演映画『私が神』で監督を務めたアレッサンドロ・アロナディーオ、アルフィエーリ監督のデビュー作『最悪の男たち』(I peggiori)からタッグを組むレナート・サンニオ、人気コメディー『お帰りなさい、大統領』(Bentornato Presidente)の監督ジュゼッペ・スタージ。アルフィエーリと同年代で、30代半ばから40代前半の彼らは、互いの作品に関わり合い、また各々で活躍している印象を受ける。今後のイタリア娯楽映画の重要な担い手となっていくだろう。

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メローニ役のジャンパオロ・モレッリ(左)とヴィンチェンツォ・アルフィエーリ監督(右)

 

もう一つのポイントは、アルフィエーリがハイブリッドな感覚を持った監督であるということ。長編第一作『最悪な男たち』はヒーローものを選んだが、二作目はノワールで勝負したいと、当初から考えていた。そんな彼のもとに、脚本の共同執筆者サンニオが、トリノの現金略奪事件の新聞記事を持ってくる。記事の末尾に書かれた「もしこの事件を映画化したら、『いつもの見知らぬ男たち』(I soliti ignoti)のように始まって、『レザボア・ドッグス』(Reservoir Dogs)のように終わるだろう」という一文を読み、両作品の大ファンだったアルフィエーリは、この事件を自分の長編二作目の題材にすることを決意したのだった。

 

『いつもの見知らぬ男たち』は、イタリア式喜劇の第一人者マリオ・モニチェッリの代名詞的作品。『レザボア・ドッグス』はクエンティン・タランティーノの記念すべき処女作だ。どちらも、ろくでもない悪人たちが出てきて強盗を企み失敗するという点で、『黄金の一味』に通じるものはある。どう始まって、どう終わるかはさておき、記事の文言に共鳴するほど、アルフィエーリのなでは、イタリア映画とハリウッドが骨肉になっている。その事実は、『アトミック・ブロンド』『ダンケルク』『暗殺の森』などなど、インタビューの端々で彼が引用する作品名からもよくわかる。イタリアのノワールの系譜のみに収まり切らない、彼のハイブリッドな感覚が、本作に深い味わいをもたらしている。

 

『黄金の一味』の上映日程はこちらでチェック!

 

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そしてイベント開催にあたり、難しい状況下でイベントの意義を汲み賛同してくださった協賛社さま、ありがとうございました! 今回は、イタリア産のワインとフードの輸入を手がける日欧商事をご紹介。

 

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