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京都ドーナッツクラブのブログ

イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」の活動や、運営している多目的スペース「チルコロ京都」のイベント、代表の野村雅夫がFM802で行っている映画短評について綴ります。

『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』短評

FM802 Ciao! MUSICA 2016年7月8日放送分
TOO YOUNG TO DIE 若くして死ぬ』短評のDJ's カット版。
昨年12月3日(関係者向け)と7月7日(木)Tジョイ京都で夜に鑑賞。

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(c)2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation
 
修学旅行の途中で死んでしまい、他のクラスメートと違ってひとり地獄へ落とされた高校生の地獄めぐりと輪廻転生を描くコメディー。監督と脚本は宮藤官九郎。主人公の大介を神木隆之介、地獄のバンドヘルズのリーダーにして、主人公を導くメンターとなるキラーKを長瀬智也。その他、尾野真千子、桐谷健太など、チラッと登場するだけの人も含め、豪華キャストが集結しています。そして、ここ大事、マチャオがすっかり惚れている清野菜名も出演してます。
昨年末に、一度関係者向けで観る機会があったんですが、8ヶ月ほど時間が経ってるし、小ネタが多い作品でもあるので、Tジョイ京都へ昨夜観に行ってきました。飛行機に登場するときにはしょっちゅうWelcome on board, sir.なんて言われることの多い僕。映画館でお姉さんからTheater No. 9と言われたのは初めてでした。
 
☆☆☆
 
宮藤官九郎と言えば、押しも押されぬ人気脚本家として、もうすっかり国民的知名度を誇っていますけど、テレビ向けに用意するものと、そもそものフィールドである演劇やこういう映画に向けた場合と、なんなら、自分で演出するのかそうでないのかによっても作品の味付けを器用に書き分けられる人です。この作品は漫画みたいに荒唐無稽だけど、オリジナル作品でメガホンも自分で取ってるわけですから、クドカンらしさという意味では最も濃ゆく堪能できると言えます。
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 もともとはリチャード・リンクレーターの『スクール・オブ・ロック』みたいなのが好きだと言う長瀬智也宮藤官九郎のやり取りからアイデアが膨らんでいったらしいですね。音楽もので、相当振り切ったキャラがいて、人生の本質をかすめるような展開がある。そういう作品は考えてみれば日本にはあまりない。じゃあ、日本ならではのやり方で、長瀬智也が演じても違和感なく自然に笑えるもの目指そうとした結果、地獄にたどり着いたと。

 
何度かフラッシュバックされる場面ですけど、地獄について書かれた本をバスの中で高校生たちがバカっぽく読んでるところありましたね。「地獄って、キリスト教の地獄? 仏教の地獄?」ってセリフがさりげなく表してるように、地獄というのは洋の東西を問わず、昔から今にいたるまで、実は天国以上にイマジネーションが膨らむ「魅力的な」場所として物語や絵画に登場してるんですよね。そういう意味では、設定そのものは実はかなりオーソドックスです。ただ、そこに輪廻転生という仏教的な要素を加えながら、最近の映画で言うなら『アバウト・タイム』とか『オール・ユー・ニード・イズ・キル』的な、つまり現世のやり直し要素を加えているのが新鮮でした。そして、さらにそこに「この世」と「あの世」との間に時差を設けることによって、時間の無常さ、非情さとか、叶わない恋が愛に変わることとか、ひねりがテーマの豊かさを育んでます。

 頭で話した、クドカンが書き分けられる人だっていうことですけど、この映画では、演出面でそういう器用さを発揮していて、現世は映画的な見せ方、そして地獄は演劇的になっていたのも大きな特徴でしょう。基本的には七回転生するという同じことの繰り返しで話が進んでいくんだけど、そこにこういう設定や演出のしかけと、特に編集リズムの緩急があることで飽きの来ない仕上がりでした。

 
忘れてはいけないのが、音楽要素。さすが出発点が『スクール・オブ・ロック』だけあって、まあ曲のレベルの高さと歌詞のそれっぽさ、バカバカしさが融合したサントラは面白いよね。顔がポイントのチョーキング講座とか、ドラムセットが騎馬戦や山車みたいになる対決シーンとか、もう最高です。
 
ただし、地獄だからグロテスクな描写もあるし、ハイテンションなギャグについていけない人もいるでしょう。万人に勧められる作品とは決して言えないどころか、人によっては不快に思うかもしれませんね。それに、地獄なのを良いことに何でもありというか、脚本もいわゆるうまいものではなくて、むしろ「やりたいだけ」なギャグもいっぱいあるから、全体的にどうみたってB級映画の味わいになってます。つまり好き嫌いは別れます。
 
まぁ、そもそもの事故が起こる直接のきっかけについては、「おいおい、これじゃいくらなんでも同級生たちが浮かばれないだろ」って思いましたけど…
 
でも、僕は地獄をちゃんと魅力的に面白く描いた時点で、一番のメッセージは表現できてると思いました。これ、純愛映画って言われてるし、そりゃそうなんだけど、僕にはこっちの方が上位にあるんです。世界は地獄みたいなもんかもしれないし、そこにはでき損ないの人間有象無象が集ってる。ろくなもんじゃないけど、だからこそ愉快でもあるんだってこと。
 
音楽ものだし、細かいギャグが多いから、大きな画面、音、つまり映画館での鑑賞をまずはオススメします。
 
☆☆☆
 
「俺の右腕はジミヘンの左腕 俺の左腕はカート・コバーンの右腕 俺の下半身はマイケル・ジャクソン 俺の声は忌野清志郎」なんてことをキラーKが歌ってましたので、カート・コバーンにスポットを当てて、番組ではSmells Like Teen Spiritをオンエアしました。

 
皆川猿時演じる「じゅんこ」が華々しく地獄に登場するところでは、マカロニ・ウェスタン『続・荒野の用心棒』主題歌オマージュがありましたね。「ジャンゴ〜♫」じゃなくて「じゅんこ〜♫」って… 笑うしかありません。

 
☆☆☆
 
さ〜て、来週の1本は、先月番組に白石和彌監督と主演の綾野剛さんが来てくれた『日本で一番悪い奴ら』です。ご覧ください。そして、鑑賞後は#ciao802を付けてのTweetをよろしく!